男性ホルモンであるテストステロンは、年齢を重ねるにつれて、その量は徐々に減少していきます。テストステロンの低下とそれに伴う臨床症状を持つ疾患は、加齢男性性腺機能低下症候群(Late Onset Hypogonadism; LOH症候群)と呼ばれています。テストステロンは、思春期では、第2次性徴の発現に欠かせない役割を果たします。成人男性においても、テストステロンは性機能の維持、筋肉量の維持、内臓脂肪の減少、造血作用、造骨作用、認知機能、気分の維持などに必要です。
テストステロンのレベルは20歳にピークがあり、年齢を重ねるにつれて、精巣でのテストステロンの生成能力が低下することで、血中のテストステロンは低下していきます。40歳での人々の2-5%、70歳では30-70%でテストステロン値の低下が観察されています。
テストステロンが低下すると、性機能の障害、内臓脂肪の増加、筋肉量の減少、貧血、骨密度の低下、意欲・集中力の低下や不安感・うつ傾向などメンタルへの影響など、男性の生活の質(QOL)を低下させる可能性が出てきます。また、女性の更年期障害でも見られる、多汗、ほてり・のぼせもよくみられる症状です。テストステロン低下による、こうした状況を男性更年期障害あるいはLOH症候群と呼びます。
検査
男性更年期問診票
男性更年期障害(LOH症候群)かどうかを調べるためのセルフチェックとして、17の質問からなるAging Male's Symptoms score(AMSスコア)があります。
「AMSスコア」はこちら。ただし、このスコアのみで診断することはありません。
血液検査
テストステロン値の測定を行います。診察の結果次第で、他疾患(糖尿病、甲状腺異常、前立腺がん等々)についても確認が必要と判断されれば同時に血液検査を追加します。
血中テストステロン値には日内変動(午前に高く、午後に低下)が見られますので、午前中に血液検査をおこないます。外注検査にて、結果が出るまで約1週間の時間をいただきます。
診断
症状や他の病気との関連性の評価、血中テストステロン値の結果から、男性更年期(LOH症候群)と診断してよいか、テストステロン補充を行う意味があるかを判断します。
治療、対応
<薬の前に>
テストステロンを増やすことで男性更年期障害の症状を軽減することを意識していただきます。筋トレ等で筋肉を刺激することでテストステロンは反応性に上昇するといわれています。
また日常生活でも、睡眠の質、量を保つこと、規則正しい食生活、ストレス解消をなどに取り組み、心身の安定を維持することも、直接の効果とは言えないものの、更年期悪化予防には重要と考えます。
薬物治療
テストステロン注射製剤(エナルモンデポー®、保険診療)
筋肉注射でテストステロンを補充する治療です。検査・診断について3~4週に1度、注射をおこないます。3~4回の投与後、効果をみて継続するか再検討をしていきます。
本剤の副作用に、多血症(赤血球が増える)、肝機能障害、精子数減少、前立腺への影響、睡眠時無呼吸症候群悪化等々があり、定期的な血液検査でのチェックが必要です。
そうした副作用の面から、前立腺がん(またはその疑い)、前立腺肥大症、肝・腎・心機能障害、重度の睡眠時無呼吸症候群、多血症、挙児希望がある方には本剤の使用はできません。
漢方薬
補中益気湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、八味地黄丸、牛車腎気丸、桂枝加竜骨牡蛎湯など。
補中益気湯にはテストステロン値の上昇効果があるとの報告がありますが、その他の漢方薬にはテストステロンへの直接の効果はないものの、更年期障害の症状に対して使用する(対症療法)ことがあります。
*当院では、エナルモンデポー®、漢方薬による治療をおこなっていますが、ご希望の方には、エナルモンデポー®の替わりに、テストステロン軟膏(グローミン®、OTC薬、薬局で購入していただきます)をお勧めしています。